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  • 疑問が残る中国の研究倫理

    FORUMスタッフ 最近発生した事例により、中華人民共和国(中国)が国内外で実施している科学プロジェクトの説明責任にまた疑問が投げかけられることになった。 2018年11月下旬、中国の科学者、賀建奎(He Jiankui)博士(写真参照)は香港で開催された会議で、「CRISPR(クリスパー)」として知られる遺伝子編集技術を使用して遺伝情報を書き換えた嬰児が誕生したと発表した。これは、世界初の事例である。この双子の嬰児はゲノム編集受精卵を子宮内に戻した女性が11月上旬に出産したものであると、さまざまなメディアが報じている。 CRISPR技術は完成すれば生命を脅かす突然変異や病状の治療に使用できるが、しかしこれにより永久的に遺伝子プールが変更され、意図しないところで他の遺伝子に突然変異が生じるだけでなく、予測不可能な健康上・社会的影響が引き起こされる可能性がある。生殖補助手段としての受精卵ゲノム編集は大変な物議を醸しているだけでなく、米国を始めその他多くの国で法律により禁止されている。HIV(エイズウイルス)に感染しないように双子の遺伝子を書き換えた賀博士の試みは、従来の規範と保護を無視するものである。同博士による研究内容はまだ発表されておらず、他の研究者の査読による検証も行われていない状態で、これにより研究対象者以外の生命も危険に曝される可能性がある。 世界の科学者の多くは、同博士と中国の無責任な姿勢により、合法的な遺伝子編集研究が妨害されることを懸念している。同研究内容は「良心に照らして受け入れ難い…これは道徳的または倫理的に擁護できない人体実験である」と、ペンシルベニア大学の遺伝子編集専門家であるキラン・ムスヌル(Kiran Musunuru)博士はAP通信に語っている。 米国国立衛生研究所(NIH)長官、フランシス・コリンズ(Francis Collins)博士は、「こうした桁外れの科学的災難が広まれば、一般市民の怒りや恐怖、嫌悪が発生することはもっともであり、それにより疾患予防や治療を目的とした非常に有望な技術に影が投げかけられる」とニューヨーク・タイムズ紙に述べている。 ニュージーランドに所在するオタゴ大学の聶精保(Jing-Bao Nie)生命倫理学者は、いちかばちかの勝負となるような野心があったとしても「政府の後ろ盾なしには賀博士が単独で同研究を達成することはできなかったであろう」と、ボストン・グローブが開設したライフサイエンス・医学関連ニュースサイト「STAT(スタット)」で語っている。AP通信によると、中国ではクローニングは違法とされているが、遺伝子編集は禁止されていない。 中国政府は関与を否定しており、2019年1月には賀博士が中国広東省に所在する南方科技大学の研究職から解雇されたと発表されたが、関係文書によると、中華人民共和国科学技術部、深セン科学技術イノベーション委員会、当時の雇用主を含む少なくとも3つの中国政府機関が同博士の研究資金の供給を支援した可能性があると、2019年2月下旬にSTATが報じている。 聶生命倫理学者は、「自分の嫌疑を晴らすために、皆が賀博士をスケープゴート(身代わり)にしようとしているが、これは深刻な制度の失敗を隠蔽する企みである」と述べている。 中国の科学者の多くも同博士の研究を非難している。 2019年1月上旬、中国の月探査機が史上初めて月の裏側への軟着陸を果たしたが、この成果も同様に、中国の科学企業に対する習近平(Xi Jinping)主席の野心を反映するものである。また、この月着陸は中国の研究の多くが未だ秘密裏に行われているという現実を浮き彫りにするものであると、アナリスト等は主張している。 2019年1月、ニューヨーク・タイムズ紙は、「NASA(米国航空宇宙局)や他の宇宙プログラムが比較的開放されているのに対し、失敗時に面目を失うことへの恐怖および関与する技術の機密性により、中国政府は自国のプログラムに関する詳細を発表することを躊躇している」と指摘した上で、「着陸前、『嫦娥4号(Chang’e-4)』に関する発表報告が非常に少なかったことから、天文学専門家や愛好家には未だに詳細を知る手掛かりがほとんどない」と説明している。 2017年のザ・サイエンティスト(The Scientist)誌の分析によると、科学、技術、医療分野にわたる国際的な研究業界において、中国は長年にわたり非倫理的であるとの悪評がある。1990年代から2000年代初頭にかけて、中国による盗作と完全な偽造の顕著な事例が多発した。当時撤回された研究論文の大部分は中国の研究者によるものである。たとえば、2006年には、米国製品に匹敵するマイクロチップを設計したとして英雄視された中国のコンピュータ科学者、ジン・チェン(Jin Chen)に不正があったことが判明している。同科学者はモトローラのチップを入手して、自身のブランドとしてラベルを付け直したと、ザ・サイエンティストは報じている。 過去数十年にわたり、中国政府と学術機関は倫理方針の確立と制度改善を目指していくつかのイニシアチブを実施してきたが、顕著な不正行為の事例は収まっていない。中国のスキャンダルは、新薬申請における見さかいのないデータ改ざんから、汚染された小児用ワクチンや血液製剤の提供に至るまで広範に及んでいる。 中国の科学者を対象として2015年にネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)が実施した調査では、調査対象者の90%以上が不正行為の検知、防止、処罰に中国機関はもっと取り組むべきだと回答している。報告書には、「これには、監視の強化、不正行為で有罪となった個人の一貫性のある刑罰、および不正行為容疑における透明性の高い調査対応が含まれる」と記されている。 2019年1月下旬、ケント大学社会科学部のジョイ・Y・チャン(Joy Y. Zhang)上級講師は、科学における中国のガバナンスの失敗は「社会政治学的な不安」に端を発していると、ウェブサイト「Conversation.com」に掲載された記事で説明している。 同講師著の記事によると、中国は失敗を恐れているだけでなく、自国が進歩とみなしているものに対する公開審査を望んでいない。 「制度的レベルでは、研究の監視には実用主義が定着している。これは、国民に懸念が発生しないように社会問題に対して技術的な解決策を適用することで、懸念を最小限に抑えることを主な狙いとしている。したがって、不正行為に対する具体的な証拠がない限り、中国の規制当局は国民や科学業界に進んで関与して、すでに発生している問題を現実的な方法で解決しようとはしない。残念なことに、これでは発生の原因を防止することはできない」 「それゆえ、科学における中国の秘密文化は、実際には主に能動的な隠蔽が問題の核心ではない。むしろ、物事を遂行することに過度の重点が置かれ、集合的な熟議が軽視されている体制における集団的対処戦略に似通っている。 中国で科学を繁栄させるためには、科学における審理と誠実性を高めるためのより高い透明性が必要であると、中国国内外の多くの科学者が主張している。前述のCRISPRの事例について、中国の武漢市に所在する華中科技大学生命倫理学研究所のレイ・ルイペン(Lei Ruipeng)事務局長は、「賀博士が単独で行動したとはとても考えられない」とSTATに語っている。また、「進行中の調査により、今回の事件で頂点に達した制度上の問題が解決されることを望んでいる。さもなければ、また同様のスキャンダルが発生する可能性がある」と指摘している。

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  • ビルマ、軍優先の憲法改正のための委員会設置

    フランス通信社 2019年2月下旬、放火問題に関して強力な軍隊に初めて公然と抗議したアウンサンスーチー文民政治の提案に対して、ビルマでは軍起草の憲法改正を議論する委員会が設置された。 アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)は2015年の総選挙で圧倒的な勝利を収めたとは言え、不安な軍隊との権限分割合意を強いられることになった。 2008年に制定された新憲法では、安保関連の省はすべて軍の統制下となり、各議院議席の4分の1は国軍司令官による指名枠となっている。 これにより軍隊は実質上あらゆる憲法改正に対する拒否権を行使できる。 アウンサンスーチー国民民主連盟は物議を醸す文書を改正することを誓約していた。 2020年の総選挙が迫る中、議会は、憲法改正を議論するための超党派的委員会を圧倒的賛成により設置した。 「全政党を含む」委員会設置の主な目的は「2008年憲法を改正するための法案を作成する」ことであると、国民民主連盟のタン・ハイン(Tun Hein)副議長兼委員長は議会に述べている。 委員会は国民民主連盟が45議席のうち18議席、軍が8議席を獲得し、残りが他の党の間で分けられことになると考えられる。 これまでのところ、議論で焦点を当てる具体的な改革、または委員会が提案を出した後の段階に関する詳細は示されていない。 委員会の存在により軍の政治的立場が脅かされることから、委員会の設置が最初に議論された2019年2月上旬、任命軍議員の一群が抗議運動を繰り広げている。 しかし、2月下旬、外国メディアとの稀な記者会見に国軍最高司令官はより和解的な口調で応じている。 同司令官は、「原則として、憲法改正の問題には同意している」と朝日新聞に語っている。 さらに、「だが、重要なのは、憲法の本質を傷つける修正はあってはならないということだ」と続けている。 議会から提議が発せられたのは、2017年に発生したイスラム教徒の弁護士、コー・ニー(Ko Ni)国民民主連盟法律顧問暗殺事件の実行犯に裁判所が死刑判決を言い渡した直後である。 憲法改正を先導していたコー・ニー顧問は、孫を抱いているときに射殺された。 同顧問はまた、外国人を家族に持つ者の大統領就任を禁止する条項の変更を提唱したアウンサンスーチーに賛成している。 亡き夫が英国人研究者のマイケル・アリス(Michael Aris)であることから大統領就任を阻止されたアウンサンスーチーは、国家顧問という高官の地位を新設している。 ヤンゴンに拠点を置くタンパディパ・インスティテュート(Tampadipa Institute)のキン・ゾー・ウィン(Khin Zaw Win)ディレクターは、超党派的委員会の設立は「非常に重要」であると述べ、国民民主連盟と軍の間に「ある種の清算」アプローチが発生し得ると付け加えている。 さらに、「これにはすべての関係者による多大な創意工夫と創造性が必要となるであろう」としている。

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  • インドとドイツ、防衛協力協定で戦略的連携を強化

    マンディープ・シン(Mandeep Singh) 2019年2月12日にベルリンで行われたインドのナーマラ・シサラマン(Nirmala Sitharaman )国防相とドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)国防相との会談において待望の独印防衛協力協定が締結されたことで、両国の戦略的提携により強力な要素が加わった。 同会談はシサラマン印国防相による2日間のドイツ訪問の一環として行われたもので、同印国防相は同地で防衛産業の指導者等とも会い、ドイツ外交問題評議会(German Council on Foreign Relations)で演説も行っている。 印国防省からの声明によると、「防衛強化と防衛産業の協力に関する協定の導入」と称される同協定は、「軍と軍の関係だけでなく、防衛産業とR&D [研究開発] の連携をさらに強化する」ものとなる。(写真:ウルズラ・フォン・デア・ライエン独国防相と握手するナーマラ・シサラマン印国防相(左)) 両国防相はこの2ヵ国間の防衛連携を独印戦略的提携の「重要な側面」と表現していると、インド側の声明は独国防省の声明に相槌を打っている。 「両国は20年近く前から戦略的提携を結んでおり、これは着実に進展している」とするドイツ側の声明は、「サイバー政策やテロ対策などの課題に関する定期的な情報交換に加えて、ドイツとインドの兵士が関与するレバノン、南スーダン、リビア、西サハラにおける国連ミッションと並行して、安保政策の分野における協力が強化される」と説明している。 独印政府は2000年5月に「21世紀の独印提携の議題(Agenda for the Indo-German Partnership in the 21st Century)」を採択することで戦略的提携を確立している。2017年5月、「サイバー政策における独印協力の共同声明(Joint Declaration of Intent…

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  • ストレスと自殺リスク対策にヨガを用いるインド軍

    マンディープ・シン(Mandeep Singh) 兵士等のストレス、疲労、単調性、さらには階級間で問題となっている自殺のパターンに対処するための手段として、インド軍はヨガに目を向けた。 2019年1月、憂慮すべき軍隊での高自殺率を配慮したインドのスバシュ・バムレ(Subhash Bhamre)国防担当国務相は、国会議員等に対する通信の中で、「インド軍の兵士等にとって健全かつ適切な環境を確保するため」に講じる措置の一環としてヨガと瞑想を提案している。 2018年11月、精神的な啓発を促す非営利団体、Isha(イシャ)ファウンデーションにより、インドのコインバトール南部郊外に所在するAngamardana(アンガマルダナ)ヨガセンターでインド軍の64名の士官と下士官を対象としてヨガの修行が行われた。この14日間の修行はヨガセッションと講義による指導で構成されている。陸軍体育科(APTC/Army Physical Training Corps)からの参加者が現在、他の兵士にヨガを教えており、最終的には軍全体にこの修行を拡大させる予定である。 Isha発行の短編ドキュメンタリーで、ヨガ体験修行者等がその体験について語っている。 「体系化身体訓練を受ける我々は、4日間連続で掩蔽壕の中にいなければならないこともあるため、歩き回る空間がないというのが不安の種となる」と言うAPTCのビシャル・フーダ(Vishal Hooda)少佐は、「伸びをすることもできない。しかし、これ[Angamardanaヨガ] なら6 × 6の空間があれば体系的に修行できる」と続けている。 Ishaの創設者、ジャッギー・ヴァースデーブ(Jaggi Vasudev)によると、Angamardanaは3.34平方メートルの空間があれば修行できるだけでなく、機器も必要なく、自己の体重と身体の運動量を利用して筋肉の柔軟性を高めることができる。特に兵士等のニーズと束縛感を念頭に置いて、ATPC人員には集中的な25分セッション形式のヨガの訓練が提供されている。 フーダ少佐は、「家族と離れて暮らす期間が長くなるにつれて、兵士の日常はある意味で単調なものとなる。これはストレスとはまた違うものである。日常が徐々に単調化され、どこかで兵士は無意識のうちにこれに感化されるようになる」と説明している。 修行を通じて、同少佐はヨガによりこの単調性を打破できることを学んだのである。「Angamardanaにより、身体的だけでなく精神的にも強くなれる」と同少佐は語っている。 軍隊の身体訓練にヨガを取り入れるという決定には、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)政権がヨガのメリットを認識しているという事実が反映されている。インドのシュリー・M・ヴェンカイアー・ナイドゥ(Shri M. Venkaiah Naidu)副大統領は2019年1月21日の演説で、このインドの伝統的な修行法を「インド最大の遺産、世界への最も輝かしい贈り物」と表現している。 インドのハイデラバードに所在するYogaśāstra(ヨーガシャーストラ)ヨガ学校のディレクターを務めるリタ・カンナ(Rita Khanna)博士は、自著エッセイ「Importance of Yoga in the…

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  • 日韓、中国偵察機迎撃のため戦闘機をスクランブル

    FORUMスタッフ 2019年2月下旬、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の電子戦・電子偵察機「Shaanxi Y-9JB」が韓国防空識別圏(KADIZ)に無断進入した直後に日本防空識別圏(JADIZ)の近くを飛行したことから警報が発せられ、両国が中国の偵察機を迎撃するため戦闘機をスクランブル(緊急発進)する事態となった。 韓国の聯合ニュース(Yonhap News Agency)によると、PLAAF偵察機は最初、領土問題が発生している黄海の離於島/蘇岩礁近くのレーダーに現れた。同島には韓国が海洋調査施設を設置している。しばらくの後、偵察機は日本海のレーダーでも捉えられたと、同ニュースは報じている。 オンライン雑誌、ザ・ディプロマット(The Diplomat)によると、日本防衛省は日本領空は侵害されていないと報じたが、レーダーでは対馬海峡を経由して日本海と東シナ海を横断するPLAAF偵察機が探知されており、これに応じて日本航空自衛隊(JASDF)は2018年12月下旬以来初めて戦闘機を緊急発進している。 中国人民解放軍空軍と中国人民解放軍海軍航空隊は、通常4週間ごとに東シナ海と日本海を監視偵察しており、2018年9月までに空自は345機の中国機を迎撃するために戦闘機を緊急発進している(2017年度比で58ソーティ多い計算となる)と、ザ・ディプロマットは報じている。 同誌によると、PLAAF事件が発生した直前の週には、核対応の巡航ミサイルで武装したロシアの「ツポレフTu-95MS」戦略爆撃機4機と「スホーイSu-35S」戦闘機4機が日本の太平洋側と日本海側の沿岸を別々の2編隊で飛行するという事態が発生しており、このときも空自は迎撃態勢を整えている。

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  • 英国の諜報機関、中国による電気通信分野の支配は安保課題と警告

    フランス通信社 中華人民共和国(中国)による通信ネットワークの世界的支配が今後何十年間にもわたって安保脅威をもたらす可能性があると、2019年2月にシンガポールで行われた講演で英国のサイバーセキュリティチーフが警鐘を鳴らしている。 国々が超高速第5世代移動通信システム(5Gモバイルネットワーク)に移行するのに伴い、中国企業が提供するハードウェアを使用して中国が西側諸国の政府を偵察する可能性に対する懸念が高まっている。 「技術のグローバル化時代における中国の地位に対する戦略的課題は、単一の電気通信機器会社よりもはるかに大きい。これは、我々全員にとって第一次の戦略的課題である」と、英国政府通信本部(GCHQ)サイバーセキュリティ機関のディレクターであるジェレミー・フレミング(Jeremy Fleming)は説明している。 「これは、今後数十年間に及ぶ非常に複雑な戦略的課題である。5G契約が増加する中で繁栄と安全を確保するためには、この課題にどのように対処するかが非常に重要となる」としている。 昨年、米国は安保上の懸念を理由に、中国の大手通信機器メーカー、ファーウェイ(Huawei Technologies Co. Ltd.)による5Gネットワーク構築を阻止するよう同盟国に圧力をかけている。 米国、オーストラリア、ニュージーランドでファーウェイの展開が厳しく制限される状況の中、英国は同社の技術を英国の5Gネットワークで使用するかどうかを決定するため安全評価を開始している。 2018年12月、ファーウェイ経営陣は英国の国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)幹部と対談している。フレミング氏の言葉を借りれば、おそらく企業にとって世界で最も厳しい監視体制である英国のセキュリティ基準を満たす一連の技術的要件にこの席で両者は合意している。 「当センターには品質とセキュリティ、さらには料金で競合している多様な市場が必要である」とする同ディレクターは、中国企業を市場に参入させることで潜在的に発生するリスクを十分に理解する必要があるとも付け加えている。 シンガポールで東南アジア各地の政府や軍指導者等と対談した機会に、過去2年間に英国で発生した1,100件のサイバー攻撃の半数には国家、具体的には中国とロシアの後ろ盾があると同ディレクターは述べている。 さらに、「我々の将来的な安保は、コーディングの品質、シリコンの設計、サイバー通信事業者の巧妙さに頼るのではなく、我々を結び付けている絆および共通の脅威に断固として立ち向かえるような自信を与えてくれる関係によって確立するべきである」と続けている。 2018年、オーストラリアは今後の5Gネットワークからファーウェイの機器を締め出しており、ニュージーランドは同国最大規模の通信事業者によるファーウェイの技術導入を阻止している。 両国とも英国、カナダ、米国を含む「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」情報共有協定に加盟している。 また、同社は競合他社から技術を盗む従業員に報酬を提供したと主張して、米国の検察官は同社を企業秘密盗難容疑で起訴している。 ファーウェイはサムソン(Samsung)に次ぐ世界第2位のスマートフォンメーカーであり、多くの国々が5Gネットワーク展開のために使用しているワイヤレスモバイルネットワーク用バックボーン機器の世界的な大手サプライヤである。 これにより、ほぼ瞬時の接続性や膨大なデータ容量の取り扱い、そして自動運転車といった未来的な技術が可能となる。 ファーウェイの郭平(Guo Ping)副会長は、政治家ではなく技術専門家が5Gセキュリティ基準を決定するべきであり、同社は各国が「他国の指示に単純に従うのではなく、国益」に基づいて決定を下すことを望んでいると述べている。

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  • フィリピン、監視システム導入事業における中国の入札を保留

    FORUMスタッフ ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、2019年2月、フィリピン議員等により中国製技術製品を使用する監視カメラ導入計画への歳出が阻止され、国家安保リスクに関する調査が開始された。同プロジェクトにより中華人民共和国(中国)がフィリピンを偵察することが可能になると、反対派は危惧している。 同決議案を起草したフィリピンのラルフ・レクト(Ralph Recto)上院議員は、「スパイ行為やデータの安全性に関して、世界中で中国製技術に懸念が持たれている」とし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して「監視システムが本当に必要なら、中国抜きでできないものか」と語っている。 英字新聞、フィリピン・デイリー・インクワイヤラー(Philippine Daily Inquirer)のウェブサイト、inquirer.netによると、レクト上院議員はまた、同プロジェクトにより、領有権についてフィリピンとの間で紛争が発生している南シナ海における中国の主張に対する懸念が強まるとも述べている。 2018年12月、国家予算審議中に同議員は「セーフ・フィリピン(Safe Philippines)」プロジェクトとして知られる400億円相当(4億米ドル)の同取引に対する懸念を表明した。これは、2018年11月の習近平(Xi Jinping)中国主席の比訪問時に、フィリピン自治省とCITCC(中国通信建设集团有限公司)の間で締結された契約であると、ザ・フィリピンスター(The Philippine Star)紙は報じている。 この取引によりCITCCに部品を供給することになるファーウェイ(Huawei Technologies Co. Ltd.)は、他国にインストールされているハードウェアとオペレーティングシステムにスパイウェアを埋め込んだという前科があることから、2018年、米国はファーウェイおよびZTEといった他の中国企業の製品を政府で使用することを禁止している。オーストラリアとニュージーランドも、同企業の特定ネットワークへの接続をブロックしている。inquirer.netが報じたところでは、CITCCはフィリピンに主要電気通信システムを構築する予定となっている国営の中国電信(China Telecommunications Corp.)の関連会社であり、この中国電信はミスラテル・コンソーシアム(Mislatel Consortium)と提携しているという関係がある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ファーウェイはこの5Gネットワークにも関わっている可能性が高い。 「セーフ・フィリピン」プロジェクトでは、向こう2年半でマニラおよびロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領の地場であるダバオの公共広場、交差点、ビジネス地区、テクノロジーパーク、住宅地、スタジアムに1万2,000台の閉回路テレビ(CCTV)カメラを設置することを計画していると、さまざまなメディアが報じている同ビデオシステムは、顔認識ソフトウェア、さまざまなデータ記録、分析ツールを組み合わせて犯罪対策に利用するものとされている。 ザ・フィリピンスター紙によると、同プロジェクトにより「市民の良好な生活と成長に向けた社会経済の安定性が保証される」とCITCC側は主張している。inquirer.netが報じたところでは、ローレン・レガルダ(Loren Legarda)比上院議員は、同プロジェクトは犯罪の15%減および応答時間の25%短縮を目指すものであると述べている。 しかし、反対派は情報がどのように利用されるのかを懸念している。また、同ウェブサイトには、2018年12月にレクト上院議員は「中国が監視情報、PNP(フィリピン国家警察)データベース、[他の] フィリピン国民に関するビッグデータにアクセスできるようになる。後で痛い目に遭うのは我々である。とんでもないことだ」とするテキストメッセージを発信したと記されている。 米国が資金援助するNGO団体、フリーダム・ハウス(Freedom House)が最近発行したインターネット上の自由度に関する報告書「Freedom on the Net…

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  • 米加共同体制で南太平洋の漁業を保護

    FORUMスタッフ 過去1ヵ月の間、危機に瀕する南太平洋島嶼国漁業の保護を目的として、米加共同の連続的な海洋哨戒が実施されている。 米国沿岸警備隊(USCG)がニュースリリースで発表したところでは、同島嶼諸国の排他的経済水域における漁業法を取り締まるため、米国沿岸警備隊カッター(巡視船)「メロン」(USCGC Mellon)はフィジーとツバルからの関係者等を乗船員として迎えて巡回に当たっている。 カナダ水産海洋省(DFO)からは2人の士官がメロンに乗船し、カナダ空軍はCP-140オーロラ対潜哨戒機を手配して偵察を実施し、米国沿岸警備隊とデータを共有している。 「同地域で米国沿岸警備隊の長距離カッターが活動することで、地域間の連携に対する米国のコミットメントおよび目的を同じくする国々の関係の強化を示せることから、同地域の海洋統治を強化し、法治に基づく漁業体制を促進できる」と、米国沿岸警備隊はその声明の中で述べている。 米国沿岸警備隊によると、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)により国際経済に数千億円相当(数十億ドル)の損失が発生するだけでなく、全世界の漁業活動の約30%を占めるIUU漁業の年間漁獲量は最大で2,600万トンに上り、その最終価格は1兆円相当(100億米ドル)から2兆3,000億円相当(230億米ドル)に及ぶ計算となる。 米国沿岸警備隊は、この巡回は「自由で開かれた」インド太平洋地域の推進を目的とするより広範な戦略の一環であると説明している。オンライン雑誌「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」によると、米国沿岸警備隊第14管区の対応隊長、Robert Hendrickson(ロバート・ヘンドリクソン)大尉は、「米国は分け隔てなく平和と繁栄をもたらす『自由で開かれた』インド太平洋の未来像実現を推進している」とし、「米国は同盟と提携を確立するという当国の取り組みを一層強化しながら、主権の尊重、公正で互恵的な貿易、法の支配を共有できる新しい提携関係を拡大かつ深化させている」と語っている。 米国とカナダはフィジー、並びにキリバス、トケラウ、ツバル、バヌアツの国々の周辺海域を巡回し、執行部隊は漁船1隻およびバンカリング船と呼ばれる燃料補給船1隻に乗船している。米国沿岸警備隊は積替規制と船舶識別要件に関する2件の違反容疑を調査中である。(写真:2019年1月下旬、南太平洋を航海中の漁船への乗船準備を整える米国沿岸警備隊とカナダの資源保全保護機関の警備隊員) 「IUU漁業により食料安保が脅かされ、漁業の持続可能性に悪影響が発生するだけでなく、これは世界中の海洋と淡水の生態系に回復不能な損害を与える要因となる。カナダ国防省と米国沿岸警備隊のような提携関係を確立することが、多くの脆弱な沿岸共同体を脅かすIUU漁業を取り締まるための鍵となる」と語るカナダのジョナサン・ウィルキンソン(Jonathan Wilkinson)水産海洋相兼沿岸警備隊長官は、「今後も引き続き他の国々と協力しながら、世界の漁業資源の安全性を高めて健全性を保護するために、IUU漁業と闘う島嶼諸国を支援していく」としている。

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  • CARAT 19の準備において関係性を構築し続けているスリランカ、アメリカのカウンターパート

    米国海軍上等兵曹マーク・アルバレス(Mark Alvarez モバイルダイビング・サルベージ第1部隊(MDSU1)に任命された船員と15名のスリランカ海軍船員は、海軍基地グアム実施された2019年2月19日から21日の3日間のダイビング訓練に参加した。 この訓練は軍事演習、協力海上即応訓練(CARAT) スリランカ19に向けた準備として行なわれた。 「この軍事演習は我々に大いに利益をもたらすものである」と、スリランカ海軍ヴァルニー・フェルディナンドス(Varuny Ferdinandusz)大尉は語る。「新しい機材と安全上の注意事項について学んだ。今後類似の機材を購入した際には、学んだことが役に立つだろう。」 訓練中、スリランカのダイバーは、CARAT 19で使用される高度なダイビング機材と安全手順に関して初めて経験を得た。(写真:2019年2月の軍事演習、協力海上即応訓練(CARAT) スリランカ19に向けた準備として訓練中に潜水する準備をする、モバイルダイビング・サルベージ第1部隊に配属された米国海軍の安全ダイバー、ラビドー・アンドレ(Rabideau Andre :左)とリランカ海軍ヴァルニー・フェルディナンドス(Varuny Ferdinandusz)大尉。) 「潜水装置のリフレッシャーコースを提供する機会が与えられるため、スリランカ軍のダイバーをここまで連れて行くことは本当に重要だった。」と、海軍チーフダイバーのケビン・チェン(Kevin Chinn)は話す。「安全性はダイビングに関わる重要な問題であり、安全面での訓練ができる能力があると、世界のすべてに違いをもたらす。」 グアムでは、スリランカ人は教室でのインストラクション、身体的な訓練、チーム構築イベントに参加し、チームの団結力を強化した。 「これは、西太平洋でパートナーとの関係を構築するのに大いに役立つ」と、話すチェン。「そうれは最大の課題のひとつであり、われわれが実行しなければ他の誰かがしてしまうだろう。」 CARATとは、アメリカ合衆国と東南アジア諸国の間で、協力と相互運用性を高めるために作られた年間を通じた一連の両国による軍事演習である。

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  • インド、モルディブが強力な防衛パートナーシップを構築

    マンディープ・シン(Mandeep Singh) 2019年1月下旬、ニューデリーでの会談にインドとモルディブの両国の国防大臣が会し、二国で国防関係を強化し続けることとした。 この会談は、インド軍とモルディブ国防軍が参加したモルディブでの2018年12月の合同演習後に行われた。中華人民共和国(中国)がこの地域に対し積極的存在感を示していることに照らして、各国が共有する脅威と、インドが島嶼国家と協力することを望んでいることを理解していることから、両国の近接性が高まっている。 「インドとモルディブは本日ここで、両国の相互的な防衛協力をさらに強化するための実質的な議論を行った」と、2019年1月24日の会談に関する公式声明で、インド防衛省が報告している。「両当事者は、海上安全保障、テロ対策、医療協力の問題について、従来よりの密接な協力を続けることで合意した。」 インドの国防大臣ナーマラ・シサラマン(Nirmala Sitharaman )国防相は、モルディブのマリヤ・アーメド・ディディ(Mariya Ahmed Didi)国防相に、インドは引き続きモルディブ国防軍の能力構築と訓練に取り組見続けると伝えたことも、声明が付け加えている。会議と並行して、各省の代表団は、2018年12月に会談のフォローアップとして、インド-モルディブ防衛協力対話の第2ラウンドを実施した。 12月15日から27日に開催された合同演習、エクベリン-2018(Ekuverin-2018)は、テロ対策、対ゲリラ活動、水陸両用作戦などの訓練を通じて相互運用性を高めるように作られている。インド軍の報告によると、合同演習はモルディブ国防軍北方本部のマアフィラアフューシ(Maalefushi)で行われた。エクベリンは2009年以来毎年実施されている。 ニューデリーに拠点を置く政策シンクタンク、ヴィヴェーカーナンダ国際財団(Vivekananda International Foundation)の研究助手プレーティーク・ジョシー(Prateek Joshi )は、各国と共通の防衛上の懸念には排他的経済水域の保護、人道支援と災害救助、海賊行為や密輸、海洋汚染の管理などが含まれる、とフォーラムに話した。 「インドとモルディブの関係において中国という要因は大きくなっている」とジョシは話す。「時に、中国からのモルディブへ申し入れがインド政府に不安を引き起こしている。インドとモルディブの協力を強化するには、信用不足を解消し、感受性を高める必要がある。モルディブはインドの戦略的利益圏内に位置している」と語っている。 イブラヒム・ムハムド・ソリ(Ibrahim Mohamed Solih)が2018年11月にモルディブ大統領に就任してから、インド政府とモルディブ政府の関係は向上し続けている。ソリ政権下においてモルディブは再度英連邦の加盟国になり、環インド洋地域協力連合にも参加した。インドもこの両陣営に属している。ソリ大統領はまたインド、スリランカとの三か国合同演習ドスティ(Dosti)への参加も再開した。 インド外務省によると、ソリ大統領はまた2018年12月にニューデリーでインドのナレンドラ・モディ首相を訪問した。この際、両首脳は共同決議と覚書数点に署名している。(写真:ニューデリーでインドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi )首相に挨拶するモルジブのイブラヒム・ソリ大統領(左)。 ジョシーはインド海軍ヘリコプター2機がモルディブ駐屯しており、1機はマレ市、1機はガン諸島南部に駐屯しているが、後者は中国海軍の基地案に近い、と加え、 「現在、インドの外交政策が様々な枠組みの下、海洋周辺の安全保障に積極的に焦点を当ててきたので、モルディブとの関係性の強化が、これまで以上に重要になってきた。環インド洋地域の環礁に連なる有効的な島々は、インド太平洋戦略におけるインドの力を増幅するよう行動することができる。」と結論付けている。 マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のフォーラム寄稿者です。

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