近隣諸島の経済と軍隊強化を支援するオーストラリア
トム・アブケ(Tom Abke)
オーストラリアは、太平洋諸島フォーラム(PIF)を構成する18の島国と地域の中で最も人口が多く、最大の経済と国軍を備えており、その資源を利用して、安全かつ安定した地域という未来像を近隣諸国と共有している。
これまでもオーストラリア政府首脳陣は、自国が掲げる太平洋の未来像について、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア、ニューカレドニア、そして小国であるツバルとニウエなどの諸国と議論してきた。
FORUMに対する声明書の中で、「オーストラリアは太平洋の同盟国と協力して、戦略的にも経済的にも安定し、政治的にも安全な太平洋地域を構築することを望んでいる」と述べたオーストラリア国防省(DOD)は、「太平洋地域は私たちの住処である。したがって、太平洋地域は当国の外交政策における最優先事項の一つである」としている。
オーストラリアは近隣諸国が超国家的犯罪や天然資源の違法搾取への対策を講じることでその海洋安保を強化し、人道支援・災害救援(HADR)を提供することを望んでいるとするDOD声明において、「機能・能力開発イニシアチブと共に実践し、戦術的、運用的、戦略的レベルにおける草の根的なつながりによりセキュリティへの焦点が強化される」と説明している。
この地域に対するオーストラリア政府の長期的貢献の証となる防衛協力計画により、同国はHADRだけでなく、海上保安、工学、訓練にも焦点を当てながら、毎年数千万ドルをパプアニューギニアなどの太平洋諸島に寄付し、オーストラリアの要員を東ティモール、トンガ、ソロモン諸島などに派遣している。(写真:オーストラリアのキャンベラ国会議事堂でソロモン諸島のリック・ホウエニプウェラ首相を歓迎するスコット・モリソン豪首相(右))
他の貢献として挙げられる太平洋哨戒艇計画とその後継計画である太平洋海事安全計画について、DODは「同計画により哨戒艇と持続的支援を提供することで、太平洋島嶼国は海上安保に関わる問題に対処する能力を構築できる」と説明している。
1980年代に開始され、1997年までPIF加盟国に哨戒艇、訓練、支援を提供してきた太平洋哨戒艇計画の後継計画となる太平洋海事安全計画はより規模が大きく、今後30年間に太平洋島嶼国に対して更なる哨戒艇だけでなく、地域の統合空中査察機能と地域調整強化に向けた取り組みを提供する15億米ドル規模の貢献が見込まれている。
オーストラリアの近隣諸国に対する支援は広範囲に及んでいる。
DOD声明では、「オーストラリア国防省は太平洋安保能力を強化する重要なインフラプロジェクトに関してパプアニューギニア、フィジー、バヌアツと提携する」とし、「これらのプロジェクトには、マヌス島にあるロンブラム海軍基地の再開発、フィジーの軍基地であるブラックロックキャンプ(Blackrock Peacekeeping Humanitarian Assistance and Disaster Relief Camp)の開発、支援パッケージを通したバヌアツのセキュリティ機能の構築支援の強化が含まれている」と説明している。
太平洋全域ではさらに大規模な防衛活動が計画されており、太平洋島嶼国の軍隊と治安部隊に追加の訓練を提供する専用チーム結成計画が進行中であるだけでなく、オーストラリア海軍も訓練や演習を実施するための配備を増加する予定で、2019年か2020年には初の太平洋治安部隊の年間合同行事(Joint-Heads of Pacific Security Forces)の開催が計画されている。
オーストラリアの防衛イニシアチブでは、太平洋島嶼国の経済発展を支援する国家努力を反映しており、スコット・モリソン首相は、2018年11月、太平洋島嶼国のインフラ投資を目的とした21億米ドルの融資・助成金の資金調達プログラムを発表したと、ロイター通信は報じている。
トム・アブケは、シンガポール発信のFORUMの寄稿者。